市民音楽祭でシーボルトのピアノの演奏があった。 1819年にイギリスで製造されたスクエア型のピアノだ。
1828年に毛利藩萩城下の御用商人だった熊谷家4代五右衛門義比が貰い受けたものだ。 シーボルトと親交を結んでいたのだそうだ。 2009年に日本ピアノ調律師協会が、イギリスから当時の部品を取り寄せ、解体復元作業をして、製造時の仕様が再現されたのだそうだ。
演奏はヨーロッパで活躍しておられる保都(ほづ)玲子さん。
曲は、バッハのコラール2曲と、ベートーベンのピアノソナタ第30番、作品109、そしてシューベルトの小品だった。
いい演奏だった。 柔らかいタッチで、滑らかな演奏だった。 高音部は木琴か竹琴みたいな音なのだが、最高音から1オクターブぐらい下あたりからは、現在のピアノともあまり変わらないような音色だった。 でも、全体としては木の音色の感じで、現在のピアノのような金属的な感じは無かったから、心地よい音なのだ。
その音で、バッハが弾かれ、ベートーベンとシューベルトが弾かれたのだ。 ベートーベンやシューベルトが生きていた頃に造られたピアノなのだ。
シューベルトの曲は、いかにもシューベルトらしい、ちょっとした修飾音のような音が文章で言えば文節の最後にちょっと付くような、優しさを感じさせる曲だった。
私は、シューベルトを愛した石井誠士に聴かせたかったと思った。 彼が書いたシューベルトについての本を全部読んだわけではないのだが、彼がシューベルトの本分と感じていたものが、今日(11月2日、以下同)のこの、シーボルトのピアノの音色にあるように思われた。・・・・・・・
まことに、このピアノは、シューベルトの曲の演奏にふさわしいように思う。 軽やかで、悲しくて、優しい響きなのだ。
石井誠士は2006年の初めの頃に亡くなったようだ。 私の4~50年来の友人だったAも、同じ年の秋に亡くなった。 明日は、亡くなってから丸々7年、8回忌の墓参に行くことにしている。
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